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だから今日は休むかも

レポート:「顔真卿」展に行ってきました(公開は24日まで)

2月8日、東京国立博物館で開催中の特別展「顔真卿 -王羲之を超えた名筆-」を見に行ってきました。

 

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中国人があこがれの「祭姪文稿(さいてつぶんこう)」が公開されているということで、ニュースでも話題になってましたよね。

こちらは展示会のチラシ表面・裏面

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 「祭姪文稿」は、顔真卿(がんしんけい/709~785年)の書で、「安史の乱」で非業の死を遂げた甥を追悼して、怒りや悲しみを込めて一気に書き上げた草稿だとされています。

書の最高傑作として王羲之(おうぎし/303~361年)の「蘭亭序(らんていじょ)」も有名ですが、この顔真卿の作品は当時の紙として本物が残っているという点でもとても貴重です。

そして、「祭姪文稿」には、中国人には特別の思い入れがあるんだそうです。
いまは中国大陸ではなく、台湾に持ち出されて所蔵されていますので、滅多にお目にかかることができないと。

台湾でも最後に展示されたのは10年以上前らしくて、海外では1997年にアメリカで展示されてからどこにも出ていないものだそうです。

詳しくはこちらのページに書かれています。

diamond.jp

 

実際に、中国人の入場者が多かったです。
団体であったり少人数であったり。
子連れの夫婦とか、若いカップルとかもけっこうよく見かけました。
中には、白い王族のような服を着て中国風の扇子を手にした中国人らしきコスプレ派?もいましたよ。

金曜日の朝、9:40すぎに入館しましたが、なかなかの人出でした。
「祭姪文稿」は行列ができると聞いていたので、真っ先に並びました。
その時点で10分待ち。
中国語と日本語でスタッフが整列を呼びかけてました。

天井から中国らしい赤い紙を吊したディスプレイが雰囲気をつくっていて、作品の前後にはみどころとか翻訳とかのわかりやすい解説があって、待つのもあまり退屈はしませんでした。

多いときになると100分待ちとかになるようです。
公式Twitterで、待ち時間がアナウンスされていますので確認されるのがおすすめです。


そして、ようやく実物を見た感想は。。。
正直、すごさは100%伝わってきませんでした。

私が凡人なのと、もしかしたら、写真の画質や複製技術が上がってきているのも影響しているかもしれません。


でも、古に(いにしえ)に思いを馳せて感慨に浸ることができましたし、達筆の中に感情の発露が現れているのが素晴らしいということがよく理解できる展示でした。

喜怒哀楽、千数百年が経っても、人間の感情とか悩みとかは共感できるものがありますね。

面白かったのは、「祭姪文稿」の本体は、何メートルもある巻物全体の中で30センチぐらいの長さ。
残りは歴代の所有者のコメントや解説や押印の部分になります。

歩きながら見るので1分もしないうちに鑑賞が終わってしまいます。
「作品の前では立ち止まらないように」とのアナウンスが繰り返されて、少しうっとうしかったです。


展示全体を通して興味深かったのは、顔真卿の人物像です。
最難関試験である科挙に合格するも、言いたいことを言ってしまうので疎まれて左遷される。
「安史の乱」では一族が大量に惨殺され、苦難の日々を送る。
ようやく晩年に重臣に登用されるけれど、ワナにはめられて反乱軍の平定を命じられる。
ワナと知りながらもトップへの忠義を果たして出向き、そこで散る。

なかなか壮絶です。

 

対照的に、王羲之は官僚としてバランス感覚があって、安定した人生だったとか。

 

高校の授業で書道をほんの少しだけかじって、顔真卿は書の名人だとは習いましたが、こういう人物像とかエピソードもいっしょに教わっていたら、もっと記憶に残ったいただろうなと思います。
何十年も前のことが思い出されて、ようやく今と話がつながった気がします。

それでも私の字は楷書なのに草書かと見間違うぐらいの汚なさですが。


展示は、「祭姪文稿」のほかにも素晴らしいものばかりで、文字の起源(殷の甲骨文字)から王羲之、虞世南(ぐせいなん)、欧陽詢(おうようじゅん)、褚遂良(ちょすいりょう)の活躍を経て顔真卿が残した功績が紹介されていました。
そして、顔真卿が後世に与えた影響、中国だけでなく、日本の空海や最澄、聖武天皇などへの流れ。
さらには、このコンピュータの時代にあって、ワープロなどで使われる明朝体は顔真卿の字体がベースになっていることまで。

王羲之、虞世南、褚遂良、顔真卿の字体を比較する動画もありました。
言葉ではうまく説明できませんが、それぞれに特徴ありますね。
特に顔真卿の字体はタテヨコの線の太さが均質で、横棒も水平という対称のバランスのよさがあります。
ほかの顔真卿以前の3人は、タテヨコの線の太さに違いがあって、横棒は右上がりになっていました。


王羲之や顔真卿など有名な書家の作品には、キャプションのところにキャラ化したイラストが描かれていて少し笑ってしまいました。
わかりやすさも追求されてます。
ところどころで「だまっちゃいられない」「まだまだ北風です」などとキャッチーなひとことフレーズがつけられているのも面白かったです。

多面的で立体的で、初心者にもわかりやすく面白い展示でした。
すべてを見終わって外に出た頃にはお昼になっていました。

思わず図録を買いそうになりましたが、このあと別の用事もあって持ち歩くのにも重いので踏みとどまりました。
通販でも買えます。送料はかかるのですが買ってみようと思います。

図録の通販はここで売ってました。

www.mainichi.store

 

こちらの写真は、展示会で唯一、写真撮影が許されている作品(フラッシュは禁止)。
泰山に彫られた文字の拓本です。天井付近から吊されているのに下の方にこれだけ長い。いかに大きいかがわかります。
(唐玄宗筆《紀泰山銘》唐時代・開元14年(726)東京国立博物館蔵)

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会期は2月24日(日)まで。あとわずかです。
中国の春節の休みが終わって、これから混雑は少し緩和されてくるかもしれません。

 

最後に作家の大石静さんのコメントをご紹介します。
「眺めているだけで、こころが洗われる。人間が潔く生きるとは、このようなかたちかと顔真卿は書で教えてくれる。」

書道の腕に覚えのあるかたも、私のように高校の授業でかじった程度の初心者も、きっと感じるところもあるし、楽しめる展示会だと思いますよ。

 

 

PS
顔真卿展、とても素晴らしいかったのですが、じつは近くに書道作品の穴場があります。

写真がパシャパシャ撮れるし、そんなに混雑もしていないのに名作が置かれているという。

きょうはもう長くなるのでこれくらいにして、詳しくは別の機会にご紹介しますね。
明日からがんばりますっ!

 

追記:続きの記事を書きました

key22.hateblo.jp